「
出星前夜
」
出星前夜
飯嶋 和一
¥ 2,100
小学館
在庫あり。
受賞一覧
2009
年
第6回本屋大賞
7位 (
飯嶋和一
)
2008
年
第35回大佛次郎賞
(
飯嶋和一
)
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amazonユーザーによるレビュー
飯嶋和一の長崎物語の壮絶な結論・島原民衆の蜂起
飯嶋和一の小説は読んだあとで読んでよかったと思わせる小説ばかりであるが、この「出星前夜」もまた、読後感が壮絶な小説
を読み切ったという満足感に満たされる。長崎を題材に取った小説では著者の「黄金旅風」があるが、「出星前夜」はその後編
のようなものである。黄金旅風に出てくる末次平左衛門がこの小説にも出てくる。学生時代に日本史の授業で学んだ島原の乱が
どうして起きたのか、幕府の権力者とはどういう人間なのか、民衆・キリシタンがどうして死んでいったのか、という深い部分
をこの小説によって理解し得た気がする。この小説には時代の権力にさいなまれる民衆の苦しみと、権力者という化け物の化け
の皮がすべて書かれている。当然、疫病に冒される弱者や年貢の苦しみに泣く百姓の姿、それを救済する宗教の力とは何か?そ
ういった種々のテーマがこの小説には含まれている。苦しく悲しい気分で読み進めるのだが、著者の筆致はそれを越えていくよ
うに書き込まれているように思われる。暗く悲しい主題の中で、ただ一つの希望が結末で提示されて行く。それが「出星前夜」
という表題の答えとなっている。権力とは何か、民衆の苦しみとは、宗教の救いとは?それらに関心のある方には必読の書と思う。
全ての人が平等で平和に生きる社会の難しさ
小説の中の登場人物”寿安”。彼が全くのフィクションなのか、史実に似た人物がいるのか全く知りませんが、読み進めるごとに何度も、僕は彼が”チェ・ゲバラ”のイメージと重なりました。飢餓と圧政、流行病に二十歳をいかぬ若者が”狂った現実に生き存えるより意思を示して死を選ぶ”ことから話が展開していきます。史実では島原の乱は”南目の百姓が代官を打殺す”ところから始まったという説がありますが、何にしろ、当時の島原には、似たような現実があったんでしょう。飢餓、圧政に耐えかね、理想を掲げて反乱を起こす。そして、結局、反乱軍は暴徒と化す。今まで人類が世界中で行って来た”愚行”。たとえそれが宗教の名の下であっても・・・。 歴史小説というよりは、全く別のものを強く心に残す小説でした。この小説は2部に分かれていますが、僕は”寿安”に沿ってストーリーが流れる1部が好きです。2部は歴史小説的な戦渦のやりとりにちょっと退屈しました。 でもこのボリュームを一気呵成で読ませるのは凄いな、と思います。今の世の中、”経済”という名の金の話ばかり。 ある意味スピチュアルに読める今時珍しい本かもしれません。
税の禄をはむ者の無力さ
長編で読むだけでかなりのエネルギーがいる。
これが天草四郎が指揮した島原の乱の別バージョンかと
しばらく気づかなかった。
登場人物も多く、だれが主人公かと思うほど。
だからいろいろな角度からの読み方ができる。
また印象に残る人物も異なるだろう。
私が一番印象に残ったのは、蜂起した住民たちを鎮圧しようとする
武士階級の知恵や判断能力のなさである。
時代の変化も読み取れず、古い観念に固執する者。
自分たち藩の利益だけ考えて、行動する者。
たたき上げた実戦力を持つ者に、対抗する策を持たない指揮者。
農民たちの反乱にオタオタする姿は、いつの世にあってもお上の禄を食む階級の
気楽さを思わせる。
現代の公務員の姿と重なるのが、悲しい。
信仰心の力、信仰心の限界を見ました
本書の舞台になる有家では、藩の悪政のため貧困がきわまり、子供が傷病にか
かってバタバタと死んでいく背景が描かれています。そんな中20年間刀を捨て、
ひたすら耐えてきた元水軍の庄屋の甚右衛門(鬼塚監物)が立ち上がって、
ゼス・キリストの名において立ち上がります。農民たちを侮っていた藩家老を慌
てさせます。何とか江戸表に知られないよう事実を隠蔽、被害の過少申告は責任
回避を図る偽装商品企業を思い起こさせます。当初蜂起の首謀者鬼塚監物は最終
的には首を差し出して藩の悪政を明らかにすることでしたが、蜂起勢が島原に入った際、
実行部隊がコントロールを失い、火付け、略奪を始めてしまいます。
本書では信仰について考えさせられます。当時のキリスト教の終末思想と活火
山を擁する島原がリンクして蜂起を助長していきます。しかし、途中から掠奪に走る農民、
神の名のもと戦国水軍衆に戻って戦う鬼塚監物、神の奇跡を信じ散っていく天草四郎、
そして聖なる戦いを目指して立ち上がったものの、理想と現実のギャップに耐え切れず
戦線を離脱し長崎で医療活動をすることで自分の救いを見出す矢矩鍬之助(寿安)
に胸を打たれました。どんなに信仰心が強くとも自分を超えるような結果はめっ
たに起こらない。信仰は心の支えにはなるかもしれませんが、人がその人以上に
なることはできないのだということを語っているように思いました。
期待通りの大著の、いい意味で重い読後感
あの飯嶋氏が島原の乱を書く、というのは、著者の他の作品を読んだことのある人間にとってはとても納得感のある話だった。
ただ、読む前に懸念していたのは、史実としての島原の乱があまりに凄惨なため、どれだけ重苦しい読後感を植えつけられてしまうんだろう、ということだった。
そんなこんなでなかなか手を付けられずにいたが、読み始めればやっぱり一気に読了。
読後感も「いい意味での重さ」という感じで、読む前に思い描いていたものとはずいぶん違っていた。
内容的には、島原の乱のクライマックスとも言える原城攻防戦よりも、そこに至るまでの過程の方が丹念に描かれている。
そのため、結局は重苦しくならざるを得ないストーリーではあっても、多少のカタルシスを感じられるものになっている。
こういった取り上げ方はもちろん、著者も計算してのことだろう。
もう一つの舞台装置としての「長崎」もまた、印象的だ。
絶望的な状況の原城と、それほど離れているわけでもないのにやけに静かな長崎の夜。
このコントラストが強く心を打つ。
やっぱり飯嶋氏の本、期待通りです。
ぜひ。
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