受賞一覧
『死の棘』(しのとげ)は島尾敏雄の代表作。日本文学大賞、読売文学賞、芸術選奨受賞。夫の不倫を糾弾・尋問し神経が狂ってしまった妻を題材にした私小説で、極限状態で結ばれた夫婦が、断絶の危機に合い、絆を取り戻そうとする様を情感豊かに描く。
1960年(昭和35年)から1976年(昭和51年)まで、『群像』、『文学界』、『新潮』などに短編の形で断続的に連載。1977年(昭和52年)に新潮社より全12章の長編小説として刊行された。なお、長編での第1章「離脱」、第2章「死の棘」まで(「家の中」「家の外で」「離脱」「死の棘」「治療」「ねむりなき睡眠」で編成)を収録した1961年(昭和36年)刊の講談社版、 同じく第3章「崖のふち」、第4章「日は日に」までを収録した1963年(昭和38年)刊の角川文庫版も存在する。全12章版は新潮文庫から刊行されている。
表題は新約聖書『コリントの信徒への手紙一』第15章の第55-58節にある使徒パウロの言葉「『死よ、なんぢの勝は何処にかある。死よ、なんぢの刺は何処にかある』死の刺は罪なり。罪の力は律法なり。(後略)」に由来している。